わたしたち七匹の猫ものがたり   白石 かずこ

 わたしたちは今、ドイツはハンブルグに近い森の中に住んでるの。もちろん、ギュンター小父さんと優しい奥さんのマリアンヌと一緒だけれど。
 ギュンター小父さんは子供の頃、とってもコワイ思いをしたのだって。その頃はヒットラーがいて、ユダヤ人をはじめ流浪の民・ジプシーや、ホモセクシャルな人たちを皆、強制的に捕らえて死の収容所に送ったのだって。
 ある日のこと、トントンってギュンター小父さんの(小父さんはまだ小学生の頃、)お父さんとお母さんの家をヒットラーの命令でナチの男がノックしたのだって。
 「なんのご用ですか?」
 お父さんが顔を出すと、
 「奥さんと離婚をするように。奥さんはユダヤ人だから、すぐ離婚しなさい。ヒットラーの命令です」
 離婚したら、彼女を死の収容所へ送るつもりなのである。
 ギュンター少年のお父さんは、ユダヤ人の歴史も宗教もなぜ迫害されるのか、そのことについては全く知らなかったけれど、自分の妻を誰よりも愛していた。自分の生命くらい、それよりもっともっと、とても愛していたので、
 「わたしは離婚しません」ときっぱり断わった。
 それでも、何回もナチの男はやって来て、
 「妻と離婚しなさい」「離婚しなさい」と言った。
 その時、ギュンター少年は、お父さんはドイツ人だけど、お母さんはユダヤ人、つまり自分はその半分ずつを持ってるから、ドイツ人だけどユダヤ人、ユダヤ人だけどドイツ人なのだと知り、とても悲しい気持ちになった。大好きな、あんなに優しい、ぼくを可愛いがってくれるお母さんを